逸話や手紙で人気の戦国武将を読み解く!実伝真田幸村

真田幸村の関連本もこれで6冊目。しかもこの6冊を1週間程度で一気読みしているので、既に知っている内容も多くなり、(若干飽きてきた部分もありますが)同じ人物について書いた本でもその人のスタンスや本のテーマによって内容も印象も変わってきます。

私が今回読んだ「実伝 真田幸村 (角川文庫)」という本は、真田幸村のファンともいっていい多数の研究者や関係者が章ごとに独立して文章を掲載し、それを一冊の本にまとめたものです。真田幸村のファンに寄る、真田幸村のファンのための本といったところです。

大河ドラマ・真田丸関連本・実伝真田幸村

実伝 真田幸村 (角川文庫)

この本が出版された時点ではまだ真田丸が大河ドラマになるというのが分かる前のことなので、正確には関連本の位置づけではありません。以前私が読んだ「真田幸村と大坂の陣」は真田幸村の本でありながら、著者は完全に徳川家康贔屓でした。しかしこの本は完全に真田幸村贔屓。

もう読んでいるとね、「あ、幸村が好きすぎて誇張が入ってきたぞ」とか「お、筆が暴走し始めた」とかもわかるぐらいの贔屓です(笑)

謎が多い真田幸村の逸話や手紙を収録

真田幸村は現代でも人気の戦国武将ですが、人気の高さとは裏腹に謎が多い人物でもあります。例えば真田家のルーツは武田家の家臣になる前の資料が乏しく謎が多かったり、幸村の出生についてもそうだし、細かいことをいうと謎が謎を呼ぶところがあります。

その謎を評論、エッセイ、小説など色んな文体とスタイルから真田幸村の実像に迫っていくという、真田幸村が好きな人のための本といえます。

真田幸村に関する逸話も豊富に収録されていますし、幸村直筆で現存する手紙の内容もしっかり収録されています。もちろん、現代語訳もありますから、手紙から幸村の人柄に迫ることも出来ます。

実伝真田幸村の内容と目次

目次は以下のとおり。第一部の前に、いきなり対談コラムがあります。「その時歴史が動いた」で有名な元NHKアナウンサーの松平定知氏とこの本の著者・火坂雅志さんの対談です。

特別対談 日本一の兵が見せた意地

第一部 真田幸村の戦いと人物像

  • 若き幸村
  • 節の上田合戦
  • 九度山脱出
  • 真田丸の攻防
  • 日本一の兵
  • ドキュメント「幸村と大坂の陣」

第二部真田幸村像の諸相

  • 義の男たちから得たもの
  • 大坂城にの人間模様
  • 真田忍びの実情
  • 真田幸村を歩く

第三部 真田幸村の生涯

  • 真田幸村とその時代

この構成を見てわかるように、真田幸村に関する事項を時系列で紹介しているわけではありません。それぞれの少テーマを別々の人が書いているので、同じような話が何度も出てきます。

例えば九度山時代の話は3回ぐらい出てきますし、兄の信幸と弟の信繁(幸村)が年子の兄弟ではなく、実は兄と弟が逆だったものを意図的に入れ替えた説とかも数回出てきます。

文章体も随筆っぽいものもあれば、論説のような固めの文章もあり、途中いきなり小説が入ったりとてんやわんやの内容です(笑)

真田幸村贔屓の推理と論調で史実があやふやに

真田幸村贔屓と書きましたが、真田幸村がなぜ現代の人にもこんなに人気なのか?というテーマで書かれている本なので、多少は仕方ない部分もあります。実は謎が多い真田幸村の実像を色んな角度から迫っていくというのがこの本。

ただ、途中あまりにも幸村贔屓が加速して、「これは幸村の挑戦だったのだ」とか「○○の狙いがあった」とか「○○を幸村は見抜いていた」とか、そこまで書くのは歴史本としてはどうかなぁと思わざるをえない部分も…。幸村が好きすぎて筆が暴走してしまったのでしょうか(笑)

この本は定説や史実をありのまま紹介するというより、むしろそれらを否定するような推理や逆説を紹介する本です。そのため、定説が逆にあやふやで見えにくくなっているので、現時点で判明している定説そのものを知りたい方にはあまり向かないかも。

真田昌幸・信幸、幸村に関する謎を推理して楽しむ

真田家の家紋として有名な六文銭の由来は、もともと三途の川の渡賃とか死を恐れない勇敢さを示したものとか、色々な説があります。この由来に関して、実は星に由来があるという推理が出てきたりします(本書・P17~)。

あるいは、真田幸村の幸村の名前に関して、本当の名は信繁でありながら、彼の死後に江戸時代に出版された書物が由来で、徳川幕府の公式文書でも後に用いられたことで一般化したというのが定説。

それに関しても、実は存命していた晩年に信繁から幸村に名前を変えいていた可能性が否定出来ないという推理(本書P170~)など、想像を色々と掻き立てられる内容が非常に多いです。

この推理が正しいかどうかよりも、色々と想像を膨らませながら真田幸村のことを考える時間が楽しいという本なのかなぁと思います。